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お笑いライブの原点とも言える狂言!はじめての狂言の楽しみ方について

お笑いライブの原点とも言える狂言!はじめての狂言の楽しみ方について

江戸時代の歴史の授業で「能・狂言」と習ったことがあると思いますが、実際に鑑賞したことがありますか?難しくてつまんないというイメージがあると思いますが、実は誰にでもわかりやすい日本の初めてのお笑いライブなんですよ。知っておけば無理なく楽しめるポイントと、気軽に見たくなる狂言の魅力をご紹介しましょう。

yoshikyo

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yoshikyo

バレエ大好きフリーライター


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目次

1. 狂言って何だろう?

まずは、狂言とは何なのか?どういう芸能なのかについて理解するために、その始まりについて簡単に触れてから、特徴についての解説に入ります。

狂言は南北朝時代から江戸時代に、能とセットになって上演されるようになったものです。元々、能狂言と呼ばれ一つのものとして始まったのですが、それぞれが発展していき別々の芸能として扱われるようになったのです。

それでは、狂言とはどのような特徴を持っているのかを説明しましょう。

狂言の特徴

能は幽玄の世界や歴史上の人物を描いた悲劇が多く、その合間に人々の気持ちをリラックスさせるために上演されたのが、狂言です。

狂言は、その時代の庶民が誰でも共感できるような、身の回りで起こった出来事を面白おかしく再現したものです。歌舞伎や能のように主人公が偉い人や貴族・侍ではなく、そこらへんにいそうな一般庶民である点が他の芸能とは大きく違う特徴になります。

また、心中事件や仇討などのような大事件を描いたのではなく、日常に起こるような何でもない出来事を描いたというのも、珍しいことといえます。その時代の一般庶民が主役のため、言葉も普通にみんなが使っている話し言葉そのままなので、なんの基礎知識も必要なく誰にでもわかりやすいものが狂言なのです。

そうはいっても、元々江戸時代に作られた話なので現在の私たちにはわからないのでは?と思うかもしれません。けれども、その面白さというのは今も昔も変わらないので、充分理解でき、笑えるはずですよ。
 
簡単に言えば、狂言とは真面目な劇の合間に箸休め的に入れられた、短いお笑い寸劇のようなものから始まり、今ではその部分だけが独立して上演されるようになったものです。今でいえば、寄席で上演されていたコントが、独立して上演されることになったお笑いライブのようなものといっていいでしょう。

阿佐ヶ谷神明宮の能楽殿

古典芸能としての狂言の位置づけは?

能狂言の元は、中国から伝わった「散楽(さんがく)」という芸能で、物まねや曲芸的なものを見せるものでした。それが日本で独自に発展する中でお芝居や喜劇的なものになり「猿楽(さるがく)」と呼ばれるようになりました。その中で、歌や舞を中心にした優美な世界を描く「能」とセリフを中心に人々の失敗やおかしさを写実的に描いた「狂言」へと別々のものにわかれて発展していきました。

狂言は、最初はアドリブ劇としてカジュアルに演じられていたようです。その後台本が作られるようになり、室町後期から江戸時代になると、三つの流派が生まれ、より洗練された芸能として確立されていきました。江戸時代には幕府公式の芸能として公認され、より一層洗練されながら発展し、現在の狂言の形式へとなりました。

それが、明治時代になると政府の後ろ盾をなくし、衰退することになり危機を迎えました。しかし、この芸能を守ろうと努力を重ねてきた先人たちの手によって、脈々と受け継がれ、現在では能と共にユネスコの「無形文化遺産」に登録されています。
 
歌舞伎や能といった古典芸能への注目が集まっている現在、狂言も洗練され、伝統のある守るべき日本文化として見直されつつあるのです。若手狂言師なども増えてきて、ホールでの公演や学校での公演などの普及活動も盛んに行われ、一定数のファンも獲得し、再び日本人の身近な芸能として確立しつつあるようですね。

2. 狂言の楽しみ方

狂言は古典芸能の中でもわかりやすいものなのですが、独特の決まりや用語などが多く、それを知っておけば、よりスムーズに理解することができます。そのような決まり事などを説明していきますね。

狂言で覚えておきたい用語

「シテ」は主役兼演出家で、「アド」はその相手役で脇役のことを表します。演目のパンフレットや解説のなどに「シテ」「アド」とあれば、「シテ」がその演目の主役として注目すればいいということです。その他大勢の群衆的な出演者がいる場合は「立衆(たちしゅう)」、そのリーダーのことを「立頭(たちがしら)」といいます。演目の中で重要な順に並べれば、「シテ」「アド」「立頭」「立衆」になります。

靖国神社 能楽堂

また、能と狂言共通の用語として覚えておくといいものを紹介します。

「見所(けんしょ)」
能狂言が上演される能楽堂の客席のこと。

「鏡板の松(かがみいたのまつ)」
能楽堂の舞台正面に必ず描かれている松の絵のこと。松が描かれている舞台奥の壁を鏡板と呼び、そこに描かれた松は、神・自然そして無限の空間が広がっていることを象徴しているのです。この松は、全ての能狂言の舞台背景・セットのような意味合いがあります。

「玄人会素人会(くろうとかいしろうとかい)」
玄人会はプロの能楽師の有料の公演で、素人会は能狂言を習っている一般の人の発表会で無料で上演される公演のこと。素人会でもバックには玄人が出ていることが多い。

二の丸能楽堂

狂言の見どころ

さて、次は狂言の見どころと注目するといいポイントを紹介します。

狂言の登場人物には個人名はなく、その職業や地位のみで表されます。その中でも狂言で一番多くの演目に登場するのが「太郎冠者(たろうかじゃ)」とその主君である「主」。「冠者」は地位としては召使のことで、大名など偉い人に仕えている人のことを表しています。

この太郎冠者は色んな演目に登場しますが、同じ人物ではなく別人です。けれども、基本的にお調子者で朗らか、主君に対しても我慢することなく言いたいことは言ってしまう、時には主君を言い負かしたりもするが、どこか憎めないという性格の男として演じられることが一般的です。

この太郎冠者という人物がとてもおもしろく、どんな人でもやってしまいそうな失敗をすることで騒動を巻き起こすのです。誰もが想像したことがあるような、こんなことしたらどうなるだろう、してはいけないとわかっていてもしたくなるようなことをやってしまい、見ている人が「あ~あ~!どうなっちゃうの?」とハラハラドキドキし、笑ってしまうのが、狂言の一番典型的なパターンなんです。

これを聞くと、どこかで見たような気がしませんか?吉本新喜劇やお笑いコントと同じではないでしょうか。しかも、このようなドタバタ劇が昔風のもったいぶった大げさな台詞回しで繰り広げられるので、面白さ倍増になるのです。これが狂言の一番の見どころで、楽しいポイントといえます。

また、他に芸術面としての見どころもあります。歌舞伎だとお囃子や浄瑠璃を語る人たちが役者とは別にいて、裏で道具を使って効果音なども入りますが、狂言ではそのようなものはなく、全て表に出ている狂言師が自分一人で行います。

つまり、効果音は自分で足を踏み鳴らしたり、舞や謡と呼ばれる踊りや節をつけた歌のようなものも自分で謡い踊るのです。その上、舞台セットもなく、小道具も最小限のものだけで狂言師のセリフのみでこういう場所にいるんだなとか、これを持っているんだなとか見る側が想像して見るのです。

狂言ではまた、役柄によって衣装が違って一目見ればわかるというのではなく、主従関係や人柄も狂言師のふるまいだけでわかってしまうという技量も見事なものです。不思議なもので、ストーリーが進むにつれて、その背景やその人が持っているものなどが、なくても見えているように感じられてきます。

所作で言えば、腰を落とした立ち方歩き方などの基本姿勢の美しさも見事なものがあります。そのままの姿勢で跳んだり走ったりするのは、かなりの訓練を積んでいないと無理なので、裏にある日ごろの鍛錬などを考えると感服せざるを得ません。

総合的にみると、狂言師という人たちはなんて凄いんだろうという結論になります。歌も踊りも効果音もアクションも自分でこなし、しかも面白おかしく表情豊かに演じて見ている人を笑わせるという、究極のエンターテイナーと言っていいでしょう。

お笑いと共に、狂言師の達者な芸を楽しむのが狂言の見どころですね。

狂言を見るには?

では、狂言はどこで見ることができるのでしょうか。始まりは能と同じだったことから現在でも主に狂言は能楽堂で上演されます。普段馴染みがないため、能楽堂なんて近所にないと思ってらっしゃる方が多いかと思いますが、意外と色々なところにあるのです。全国的に能楽堂を持っている神社も多くあります。

能楽協会ホームページの能楽堂検索を利用すると、日本全国の能楽堂を地域ごとに検索することができますので、紹介しておきます。

公益社団法人 能楽協会

また、能狂言の色々な情報を扱っている能狂言ポータルサイトがあります。こちらでは、狂言の様々な知識や、公演情報、役者さんのインタビューなど狂言のことを知るためには便利な記事がたくさん載っています。こちらのサイトを見れば、狂言のことがもっと身近に感じられ、知識を深めることができるのでおすすめですよ。

能 狂言ホームページ

他にも最近では、野村萬斎さんが一般的にも有名になったことから、狂言がメジャーになり、普通のホールで上演されることも多くなっています。また、野村萬斎さんの和泉流とは違う、大蔵流の茂山千五郎家の若手狂言師が「Cutting Edge」というユニットを組み、狂言の手法に現代的な笑いをミックスして斬新な舞台を上演しています。

値段も手頃なので、初心者はこのような舞台から入ってみると、その楽しさを感じられることでしょう。このような舞台なら、お友だちを誘って一緒に行くにもぴったりですね。

このユニットのお家元茂山千五郎家のホームページがありますので、そこで彼らの情報をチェックしてみてくださいね。

お豆腐狂言 茂山千五郎家

また、茂山千五郎家のファンクラブ「クラブSOJA」のYouTubeチャンネルがあります。そこでは狂言の映像もアップされていたり、「YouTubeで会いましょう」という狂言の演目解説、狂言師の話、など狂言ファンのためのオリジナル番組もあり、これを見るとかなり狂言が身近に感じられるでしょう。初心者の方には是非おすすめしたいです。

茂山千五郎家のファンクラブ「クラブSOJA」

3. 狂言のおすすめ演目三選

狂言の魅力をわかってもらったところで、初めて見る狂言として分かりやすいおすすめの演目の三本の内容をざっと紹介しましょう。

三番叟(さんばそう)

この演目は『翁』という天下泰平を祈る儀礼曲の後半部分にあたります。『翁』はおめでたい演目とされていて、特別なときに上演される演目として知られています。

これはストーリーのあるものではなく、能の最も古い形を残し芸能の原点ともいわれる作品であり、祭儀的な意味合いの強い格式高い様式美を楽しむ演目です。

狂言師が足を踏み鳴らして奏でる足拍子が特徴で、見て聴いて身体で楽しめるので、最初に見る作品としておすすめできます。

靭猿(うつぼさる)

子役が初舞台を踏む際には、この演目で小猿を演じることが多く、その小猿のかわいらしさが見どころの一本です。

太郎冠者を伴い狩りに出かけた大名が、猿回しに出会います。その猿の美しい毛並みにほれ込んだ大名が、その猿を貸せと脅かします。必死で拒んだ猿回しですが、観念して杖で小猿を打とうとしたところ、小猿がその杖を奪い舟をこぐ真似をしてみせます。そのいじらしさ、かわいらしさに、猿回しのみならず大名も涙して小猿の命を救うことにして、最後はみんなで楽しく歌い踊り、大名も猿の物真似をしたというお話です。

小猿のかわいらしい仕草と共に、大名の愛嬌ある風情も楽しい、わかりやすい作品です。

棒縛(ぼうしばり)

これは、先ほども触れた太郎冠者とその相棒ともいえる次郎冠者の二人の、コントのような面白おかしい、これぞ狂言というべき演目です。

主人が出かける際、留守番をする太郎冠者と次郎冠者が酒を勝手に飲まないように知恵を使います。そして、太郎冠者は両腕を広げたところに棒を縛り付けて、次郎冠者は後ろ手に縛りあげ、手が自由に使えないようにして出かけて行きました。それでも、どうしても酒を飲みたい二人はどうすれば酒を飲めるか色々な動作を試し、やっと酒を飲むことに成功します。すっかり酒に酔ってご機嫌になり、謡と舞を楽しんでいると主人が帰宅して大慌てというお話です。

二人が自由の利かない状態で何とかしてお酒を飲もうと格闘する姿は、誰が見ても大笑いできる作品です。

日本酒で乾杯

狂言は気軽に楽しめる娯楽

狂言の魅力、楽しみ方など紹介してきましたが、いかがでしたか。古典芸能としての格式もありながら、コントのような面白おかしい仕草や動きなどで笑える、日本のお笑いライブの原点とも言える、誰でも気軽に楽しめる娯楽であるということが分かってもらえたと思います。

何はともあれ一度実際に見てもらうのが一番です。是非、足を運んでみてください。

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