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前時代の遺物?ステイホームでも始められる!楽しい『時刻表』の世界

前時代の遺物?ステイホームでも始められる!楽しい『時刻表』の世界

今やすっかり便利になったスマホの乗換案内アプリ。鉄道だけではなく、飛行機や路線バスの情報もわかるなくてはならないツールです。が、古き時代の紙の『時刻表』もたまには開いてみてはいかがでしょうか。アプリと時刻表を比較しながら、『時刻表』の楽しみ方をご紹介します。

鼠入昌史/鉄道ライター

この記事のアドバイザー

鼠入昌史/鉄道ライター

全国の“なんの変哲もない”鉄道駅や路線を訪ね歩くのがライフワーク


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目次


みなさんは鉄道に乗って出かけるときに、どうやって乗換ルートや乗る列車を決めていますか? おそらく、ほとんどの人がスマホの乗換案内アプリを利用しているのではないでしょうか。到達時間だけではなく乗換回数や運賃の安い順に表示できたり、駅での乗換にかかる時間に余裕を取る設定にできたりと、アプリはかなり便利なものになっています。そうした中で、紙をめくって目当ての列車を探さねばならない時刻表は、いわばアナログの世界、前時代の遺物のような印象を持っている人も多いでしょう。

ですが、そんな紙の時刻表にもメリットがないわけではありません。それどころか、使い方一つではアプリ以上に鉄道の旅の楽しさを広げてくれるツールでもあるんです。特に最近は新型コロナウイルス対策で外出自粛が続いており、旅行を諦めている人もたくさんいると思います。そんな中でも旅行の楽しさをほんの少しだけ感じさせてくれる――。時刻表には、そんな力も持っているのです。今回は、時刻表と乗換アプリを比較しながら、時刻表ならではの“楽しさ”についてご紹介しましょう。

1.時刻表と乗換アプリ、どっちが便利?

乗換アプリのメリット・デメリット

乗換アプリはとにかく目的地と出発(もしくは到着)時間がはっきりしているときに便利です。例えば、仕事で東京から大阪に行くとき。大阪の出張先に午前11時に到着していなければならないならば、到着時間から遡って乗るべき新幹線を自動的にはじき出してくれるのですから、時刻表をめくるよりもよほど簡単でしょう。

さらに、検索結果の画面を見れば乗換ルートだけではなく、運賃や特急券など必要な料金もたちどころに分かる点も大きなメリット。加えて、最近では飛行機や高速バス、路線バスなども検索対象に含まれており、すべての手段から最も効率的な交通機関を教えてくれるのがアプリの最大の強みと言っていいでしょう。もちろん検索結果の視認性の良さも優れています。

いっぽうで、目的地がはっきりしていない鉄道旅行などでは使い勝手がいくらか悪くなってしまいます。途中のどこかの駅で途中下車をして小一時間散策をした場合の乗り継ぎはどうなるのか。こういった場合には検索を何度も繰り返す必要が出てきますし、おおまかに路線図が頭に入っていないと寄り道しながらの旅のプランをアプリだけで練り上げるのは難しくなってしまうでしょう。

時刻表アプリ画面

時刻表のメリット・デメリット

時刻表のメリットは、アプリとは対局にあると言えます。アプリのように手軽に検索することはできず、結果もひと目でわかるわけではないので乗換ルートを調べる場合には向いていないと断言してもいいでしょう。

いっぽうで、原則すべての列車の時刻が一覧になってまとまっているので、広い視野で列車の運行の概要を掴むのにはまさにうってつけ。さらに、ひとつの列車がどの駅を何時何分に出発し、終点までの間にどの駅にいつ停車するのかもわかります。次の列車が何分後に来るのか、途中駅で降りて折り返す場合にはどのくらい待つ必要があるのか、また乗り継ぎ駅で食事をするなど余裕を持った行程を立案するときにも、大いに役に立つと言っていいでしょう。アプリとは異なり、目当ての路線や列車だけでなく他の路線や列車が一覧となってまとまっているため、思わぬ発見をすることもできる点もポイントです。

もう少しわかりやすく例えれば、本を購入するときにアマゾンなどのネットショップがアプリ、実際の書店が時刻表だと思えばいいかもしれません。目的が決まっていればアマゾンで目当ての本を買うようにルート検索ができるアプリを、明確な目的がなくなんとなくおもしろい鉄道旅行を計画したいときには書店でブラブラするように時刻表を。このように、目的に応じて選んで利用してみてはいかがでしょうか。

2.“外出自粛”でも楽しめる時刻表の世界

時刻表のおすすめは?

ここからは、時刻表を使った“ステイホーム”での楽しみ方をご紹介しましょう。とは言え、いきなり「さあ時刻表を開いて……」などといっても困るでしょう。そこでまずは時刻表を読みこなすテクニックを簡単に説明します。

最初に時刻表の種類から。時刻表にはB5サイズで分厚いタイプを基本として、コンパクトなサイズのものや文字が大きく見やすい仕様のものなどさまざまな種類が書店に並んでいます。特定地域や特定の鉄道会社限定の時刻表でなければどれを選んでも基本的には問題がないのですが、おすすめなのは『JTB時刻表』(JTBパブリッシング)か『JR時刻表』(交通新聞社)のどちらかです。

この2つの時刻表、何が違うのでしょうか。前者はかつてJRが国鉄だった時代、「国鉄監修」を名乗ったいわばオフィシャルの時効表でした(『交通公社の時刻表』)。後者はJR各社が共同編集というスタイルを取っており、現在のオフィシャル時刻表といえます。ただ、その内容にはまったく違いはありません。出版社によって列車の時刻が変わるわけではないので、正直どちらを選ぶかは“好み”の範疇です。

違う点を挙げるとすれば、路線の並んでいる順番や特急列車の使用車両掲載の有無、さらに特急列車を赤字で印刷しているか、それとも太字か(前者は『JR』、後者は『JTB』)など。筆者は個人的に長年『JTB時刻表』を愛用していますが、使いやすさは慣れの問題なので、好きなものを選べば問題ありません。

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鉄道旅の計画に必須の1冊! 創刊95年の歴史を持つガイドブック鉄道をメインとしてバス・航空・船舶など、日本の全ての交通情報が分かる月刊誌です。話題の観光列車の時刻・運賃、JR・私鉄のおトクなきっぷ、各駅の駅弁情報など、鉄道旅をより楽しむための情報から、高速バス、フェリー、国内線・国際線の航空スケジュールなど鉄道以外の交通情報まで、幅広く掲載し、自分好みの旅行計画を立てることに役立つ雑誌です。

時刻表の読み方テクニック

時刻表は巻頭の地図(路線図)で乗りたい路線を探し、その路線の時刻が乗っているページを開いて詳細を調べる……というのが基本的な読み方です。路線図ページには各路線の時刻が載っているページ数が書かれているので、目次のような役割を果たしているんですね。

そのため、まずは自宅に近い路線を探すところから始めましょう。ただし、東京や大阪の中心部の通勤路線についてはすべての列車が掲載されているわけではないので、その点は注意が必要です。

次いで、都合の良さそうな時間帯を探して乗る列車を決めたいところ。ですが、その前にもう少し路線図を眺めてみましょう。路線図を見てどの駅でどの路線に乗り換えてみようか、それを考えるのです。これが決まればようやく列車の時刻を見ていくことになります。

該当のページを開くと、縦軸に駅名が並んでいるのがわかります。横軸は列車です。そしてひとつの列車がどの時刻にどの駅を出発するのかが一覧になっています。「レ」と書かれているのは通過を、「‖」はその区間を経由しないことを意味し、4桁の数字は特記がなければ原則出発時刻(終着駅は到着時刻)です。

このぎっしりと書かれた数字と縦軸の駅名を見ながら読み解いていくのが時刻表の楽しみ方の基本になります。ひとつの列車がどのように終点の駅まで走っていくかがわかるので、それを追いかけているだけでも楽しめるかもしれません。そして乗り換えたい駅では到着時刻を確認してから乗換先の路線のページを捲り、ちょうどよい列車を探す。その先の乗換駅でも同じようにして……と繰り返していけばOKです。

これだけだとアプリでも同じじゃないかと思うかもしれません。ですが、例えば乗り継ぎの駅で周辺を散策する時間を組み込んだり、観光時間から逆算して計画を立てたり、さらに路線図で目に入った気になるローカル線に乗ることにしてみたり、と自由自在に旅を広げていけるのは時刻表ならではです。

そして、この時刻表の楽しみ方のポイントは、“家にいながらにしてできる”こと。アプリならば実際に出かけるときにしか検索しないでしょう。ですが、時刻表とにらめっこして効率的な乗り継ぎを見出して遠くまでローカル線の旅の計画を考えるのは、まさしく“ステイホームでの妄想旅”。時刻表でしか見たことのないローカル線がどんなところなのか、思いを馳せるところも含めて楽しんでみてはいかがでしょうか。

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3.もっとマニアックに時刻表を楽しむ

時刻表のマニアックな読み方

時刻表は単に列車の時刻を確認して旅行の計画を練るだけのものではありません。読み慣れてくると、列車の運行パターンをそこから読み取ることができるようになるのです。

例えば、ある単線のローカル線を思い浮かべてください。単線の路線では、途中の駅で上り列車と下り列車がすれ違う必要があります。ではその駅はどこなのか。もちろんこれは検索アプリで調べることはできません。時刻表にもはっきりとは書かれていません。ですが、実は時刻表を読み込めばすれ違い駅を特定することもできるのです。これは、特急列車などに追い抜かれる駅を特定する方法とも同じです。

簡単に説明すれば、すれ違いをする場合は上下どちらかの列車が少なくとも数分以上すれ違い駅で停車することになります。主要駅を除くと時刻表に書かれている時刻は出発時刻のみ。それでどうやってすれ違い駅を見つけるのか。それは、駅間の所要時間はどの列車でも基本的に変わらないことを利用するのです。

普通ならば5分で次の駅について出発するところ、8分かかっている上り列車があるとしましょう。駅間を走っている時間はどの列車も変わりません。つまり、差の3分は駅で停車している時間と判断できます。そこで反対の下り列車を見てみると、この3分の間にその駅を出発している列車が見つかるはずです。そうしてすれ違いの駅を見つけることができるというわけです。

なかには、30分程度すれ違い待ちで停車するケースもあるので、そうした駅ではその時間を利用して駅周辺の散策をすることも可能。これなどは時刻表ならではの機能と言えるでしょう。

古い時刻表を見てみよう

時刻表は毎月発行されています。ダイヤが大きく変更されるのは1年に1回。ただ、季節ごとに臨時列車が設定されたり、分単位の細かいダイヤ調整が行われていることもあるので、毎月時刻表が発行されているわけです。つまり、時刻表は“その月の時点での列車の運行をまとめた資料”という見方もできます。

ならば、古い時代の時刻表を開いてみると、その時代にどのような列車が走っていたのかがわかるということ。今はない路線や列車があったり、所要時間や運転本数がまったく変わっていたりすることも珍しくなく、いわばその時代を映し出しているひとつの歴史的な資料にもなるんです。

過去の時刻表

実際、過去の時刻表の復刻版も出版されています。JTBパブリッシングから発行されている1964年10月の時刻表復刻版を見てみましょう。1964年10月は東海道新幹線が開業した月。その当時、東海道新幹線には「ひかり」と「こだま」しかなく、「ひかり」は1日にわずか14往復、東京〜新大阪間の所要時間はなんと4時間もかかっていたということがわかります。

さらに在来線のページを見てみると、今はなき青函連絡船や長距離の夜行列車がたくさん並んでいます。新幹線と並行している東海道線にも東京駅から名古屋駅を結ぶ準急「東海」があったり、青森駅を早朝に出発して日本海側を走って夜に大阪に到着する特急「白鳥」があったり。その当時の世相を思い浮かべながら眺めれば、奥深い一級資料であることがわかるでしょう。

時刻表で家にいながら旅行気分を味わえる

このように、時刻表は単に列車の行き先や時間を調べるだけにとどまらず、列車がどのように走っているのか、どんな目的で走っているのかなどが読み取れる実に興味深いものなのです。それを日がな一日眺めるのを趣味とする人もいるくらいですから、奥の深さがわかるでしょう。

ですが、かくいう筆者も実は普段はほとんど時刻表を見ることはありません。アプリで乗換ルートを検索することのほうが多くなっています。それは、目的地がわかっていて路線図が頭に入っていれば結果がひと目でわかるアプリのほうがやはり便利だから。複雑なルートを計画する場合は時刻表を開きますが、アプリでも工夫をすれば充分に対応が可能。

どちらを使うかは人それぞれ、使いやすい物を選んでいただければOKです。ただ、ときには時刻表を開いて、頭の中で『ああ、ここの駅の近くには有名なお城があった』『ラーメンが有名な街じゃないか』などと調べながら妄想旅行を楽しんでみるのもいいでしょう。鉄道旅行のパターンはまさに人の数だけあるもの。時間をかけて楽しめる、ステイホームにピッタリの趣味になるかもしれません。そしてもちろん、いつかは実行に移してみたいものですね。

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前回の東京1964オリンピックを契機に誕生した東海道新幹線。その東海道新幹線の開業前夜のダイヤを掲載した、国鉄監修『交通公社の時刻表 1964年9月号』の復刻版時刻表です。日本に新幹線がなかった時代の最後の様子が分かる貴重な資料となっており、鉄道ファン、歴史好きの方にオススメの一冊となっています。

鼠入昌史/鉄道ライター

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鼠入昌史/鉄道ライター

全国の“なんの変哲もない”鉄道駅や路線を訪ね歩くのがライフワーク




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